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イフは、既に公園に来ていて、俺に気づくとぺこりと頭を下げた。
「おはようございます、ソラさん」
イフは、丁寧に言った。
(そう言えば、むこうに名前を呼んでもらったのにこっちは名前を呼ばなくて、アカリにブーイングをくらったな)
と、俺は、思った。
今朝がたのアカリとのやり取りで学んだことが早速活きてくるシチュエーションだ。
(あまり気どらずに自然体でいこう)
俺は、ソラに、
「おはよう、イフ」
と、挨拶した。
「……」
イフは、少しじと目になった。
「どうかしたのか?」
「いえ。昨日、出会ったばかりなのに呼び捨てとは、距離の詰め方が大胆だと思いました」
と、イフは、言った。
(あ、あれ?)
俺は、言葉を返せず、逡巡した。
もしかすると、チャラいというか軽いというか馴れ馴れしくしすぎたのだろうか。
距離の取りかたは、人それぞれだ。
万人に当てはまる正解などないのである。





