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少し開けた窓から入ってくる夜風が、心地よかった。
星がよく見えるのは、俺がいた世界のような電気の明かりがないからだろうか、そんなことをぼんやりと考えた。
今日は、色々なことがあった。
武器屋への就職と急転直下の退職、チンピラとの騒動、そしてイフとの出会い、てんこ盛りだ。
この出来事の濃密さたるや、ゲームの序盤のイベントラッシュぐらいの勢いだろう。
ちなみに、イベントを通して、宿賃代わりの商品券は別として、フラグがたちそうな重要アイテムが増えたという事実や、チンピラたちとの騒動を戦闘と称していいかは別として、戦闘を通してレベルが上がったという実感はあまりない。
(冒険者ギルド、か)
明日は、イフと一緒に冒険者ギルドに赴く予定だ。
偶然に偶然が重なった形なのだろうが、これは、大きな前進だ。
今日の朝公園のベンチで手帳のメモ用の白紙のページに箇条書きにしてみた、三つの課題を、思い返してみた。
何事も、復習が肝要である。
(ふむ……)
俺は、心の中で音読してみた。
Aどうやって、魔王を倒すのか?
Bどうやって、衣食住を確保するのか?
Cどうやって、金を稼ぐのか?
冒険者ギルドでの俺自身の努力と結界しだいだろうが、BとCは何とかなるのではないだろうか。
生活基盤を確立しつつ、後はAについて考えていけばよさそうである。
(それと、考えなければいけないのは……)
俺は、虚空を見つめた。





