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「悪い人たちをあっという間にやっつけちゃったんでしょう。それも、ものすごい圧倒的に! すごいなあ」
アカリは、目を輝かせていた。
「……まあ、そんな感じなのかな」
俺は、歯切れ悪く答えた。
「決め台詞が、あったんだよね」
アカリは、付け加えるように言った。
「……まあ、そうだった……かな?」
俺は、語尾のイントネーションを右上がりにしながら、やはり歯切れ悪く答えた。
決め台詞などあっただろうか。
思い出すかぎり、そういったものはなかったように思えた。
アカリは、謎のポーズを取りながら、
「『俺の右手がうずく前に消えろ! 死にたくなかったらな』って宣言したんだよね」
「いや、それは尾ひれのついた噂だぞ」
俺は、歯切れよく答えた。
そんな中二感あふれた台詞を、あの公衆の面前で軽々に言えるわけがない。
「そうか、やっぱり噂だったかー」
アカリが、残念そうに言った。
「じゃあ、『俺の嫁に手を出すなーっ!』っていう台詞は?」
「根も葉もないぞ!」
俺は、さらに歯切れよく答えた。





