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「お邪魔します」
「……お邪魔します」
と、俺も、言って、イフの後ろから家の中に入った。
家の中は、とても落ち着いた雰囲気である。
一口に言えば、アンティークふうの部屋という表現がぴったりだ。
「狭いところじゃが、くつろいでくれ」
と、老人が、言った。
使い込まれたテーブルや椅子、ロッキングチェアに古書などが置かれていて、まるで映画のワンシーンや絵画の中に迷い込んだような錯覚を起こしてしまいそうだ。
「よく来てくれたのう」
老人は、にっこりと笑った。
(あれっ)
先程は気づかなかったが、あまり顔色がよくないようである。
「おかげんはいかがですか?」
「イフちゃんのおかげで、調子はいいな。薬が、よく効いているようじゃよ」
と、老人は、言った。
「あまり無茶はしないでください」
イフの心配そうな表情に、老人は、柔らかく笑った。
「この年になると、そもそも無茶はきかないものだからのう。心配いらんよ」
イフは、バスケットを老人に見せながら、
「今朝採ってきたばかりのコバオオの葉です。お薬の備えが、きれる頃かなと思いまして。お台所おかりします」





