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「おじいちゃん、こんにちは」
イフは、笑顔で言った。
「おお、イフちゃんか。こんにちは」
顔をのぞかせたのは、立派な白髭をたくわえた男性の老人だった。
穏やかな顔つきなのだが眼光鋭くといった感じの空気を、老人はまとっていた。
老人は、俺のほうを見やって、
「こちらのかたは?」
と、聞いた。
「ココノエ、ソラと言います」
俺は、お辞儀をした。
「ほう……」
声を重たくした老人の眼がきらりと光り、その鋭い眼光に射抜かれたような錯覚さえ覚えた。
(何だ……?)
俺は、緊張した、背中にいきなり氷水でもかけられたように嫌な感じに襲われた。
老人は、一言、
「イフちゃんが紹介したがっていた婚約者かの?」
これに対して、俺とイフとで、
「そんなわけないだろ!」「そんなわけないでしょう!」
と、叫んでいた。
いいハモリぐあいである。





