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「……本当に優秀な者は、王都お抱えの宮廷錬金術師になりますから。私など、まだまだです」
と、イフは、言った。
この異世界における錬金術師の何たるかは、イフのおかげで少しわかったが、少し聞いただけでも厳しそうな世界である。
(資格試験のようなものをパスしないとなれないのか)
と、俺は、思った。
偏差値で言ったら、どのくらいのものなのだろう。
学生だった俺は、自然とそんなことを考えていた。
もしくは、俺のいた世界での弁護士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士・社会保険労務士などの士業や医師・薬剤師などの師業に代表されるような取得が難しい資格で、狭き門なのかもしれない。
見かけによる判断はご法度であることは承知しているが、このイフの小柄で可愛らしい外見からは、錬金術師というワードを連想しにくかった。
もっとステレオタイプで、片眼鏡をかけていたり学者然としたローブをまとっていたりしていれば連想もできそうなものの、ぱっと見、小さな身体に不釣り合いなバ大きめのスケットを抱えたワンピース姿の女の子だ。
そんなことを考えていて、イフのことを凝視してしまっていたのだろうか、イフは、
「どうかしましたか?私の顔に何かついていますか?」
俺は、我に返ってなんでもないと返した。
「そういうあなたこそ、ただ者ではありませんね」
と、イフが、言った。
「あれだけの力……見たこともない」
イフの顔は、真剣そのものだった。
「はは……まあね」
俺は、あいまいに言葉を濁した。
俺自身、俺が振るったあの力が何なのかわかっていないのである。





