1-7
連日の予備校帰りで、俺は意識が朦朧としていた。
帰り道では張りつめていた緊張の糸がほどけるからだろうか、疲れがどっと襲ってくる。
頭は回らないし、足も重い。
(……何でこんなに勉強やっているんだろうな)
と、俺は、思った。
俺は、受験を控えていて、今日は予備校の模試の結果が返ってきていた。
怒涛のD判定である。
つまり、このままいけば、受験したところで確実に門前払いである。
一生懸命勉強しているつもりだが、結果がついてこないのは気分のよいものではないし、模試の結果判定の通知書は、自分を全否定されたような気がして、気が滅入った。
俺は、ため息をつきながらも、
(でも、やるしかないかあ)
参考書を放り投げて受験勉強をやめる理由など、いくらでも思いつきそうだが、やめたところで、今以上に状況がまずくなるだろうから、やるしかないということは、理屈では、わかっている。
俺の足取りは、重かった。
ふと、俺の目の前で、小さな女の子が、大通りを横断しようとしていた。
横断歩道はない。
すぐそこまで、トラックが迫っていた。
トラックは、減速する気配はない。
「くそっ!」
俺は、叫んでいた。
無我夢中で、後先考えずに飛び出していた。