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「名と姓が、逆なのですか?」
イフは、驚いたように聞いた。
やはり、少なくともこの異世界のイフやアカリのいる地域では、俺のような姓が先で名が後という構成は、イレギュラーのようである。
「そういうことだから、ソラでいいよ」
と、俺は、言った。
わかりましたと、イフは、頷いた。
「ソラさん。あらためまして、さきほどは危ないところをありがとうございました。感謝します」
イフは、ぺこりと頭を下げた。
「お礼なら、さっき言ってもらったよ」
と、俺は、言ったのだが、
「いいえ。きちんと名前をお呼びしていませんでした」
イフの幼げなしかしとても真摯な眼差しが、ずいっと俺に向けられていた。
(生真面目な子だな)
と、俺は、思いながら、
「君も、あれだけ強いなら、俺が出なくてもよかったんじゃないか?」
俺は、先程来気になっていた素朴な疑問をぶつけてみた。
チンピラCを見事に撃退した手合いといい、イフならあの場を一人で収められていたのではないだろうか。
小さなガラス瓶を使った爆発と爆風は、剣と魔法の世界における炎の魔法のようで、あれに対処できる者など、そうそういないのではないだろうか。
イフは、目を伏せてゆっくりと首を振った。
「いえ。あの人たちにまともに当たられましたし、その衝動でしばらくは気持ちが悪くて立ち上がることもできなかったのです」





