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冗談めかしたふうのその台詞からは、余裕というニュアンスは感じられなかった。
「ははは……」
セドリグの乾いた笑いが、静かに響いた。
「手のひらから蝶のように逃げるのは、かわいらしい女性だけで十分じゃないか……」
セドリグは、地面に落ちているポケットチーフを拾いあげて、スーツの胸ポケットにゆったりと挿し込んだ。
その手が震えているのを、俺は、見逃さなかった。
「そうだろう、イフ?」
あいまいな微笑をたたえたセドリグの問いかけに、イフは、
「私には……わかりません」
とだけ言った。
「どうした、ココノエ君も笑えよ……?」
俺は、塩対応で、
「遠慮しておく」
とだけ、言った。
セドリグからは、先ほどらいまで俺が感じていた猛者の雰囲気は、消え去っていた。
(そういう……ことか)
と、俺は、内心瞑目した。
ここにきて、俺は、確信していた。
(やつも、同じなんだ)
と、俺は、思った。





