表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

681/4619

4-468

 もっとも、俺が知っている石蹴りの遊びかたは、そのような本格志向(ほんかくしこう)のものではなくもっと単純である。


 ゴルフのようにカップに見立てた一つの枠を用意して誰がそこに少ない打数で正確に蹴り込めるかとか誰が一番遠くまで小石を蹴り飛ばせるとかだった。


 このあたりの遊びかたの云々(うんぬん)は、年代や地域によりまちまちだろう。


 いわゆるローカルルールというやつもある。


 トランプの大富豪での革命や8切りやJバックやスペ3返しのようなものだ。


 ただ今の俺の石蹴りは、枠がどうだとか飛距離がどうだとかローカルルールがどうだとかはあまり関係がなかった。


 俺が企図(きと)したのは、とにかくセドリグに向かってセドリグに直撃させることなくセドリグからあまり離れない位置に小石を蹴り込むことだった。


 それが、俺の狙いだった。


九重(ここのえ)君のおお……ロングシューウウウゥゥゥゥトオオオオオオオオ……はああああああっ!』


『すさまじい威力だあああ……っ!』


『は、速い……すさまじい速さだあああああああ……っ!』


『受けるキーパーのセドリグ君はああああ……っ? あああああ……っ! う、動けないいいいいいいい……っ!』


 俺のいた世界で大人気だった少年サッカーの漫画の実況の声が脳内で大音量で響き渡りそうなほどだった。


 大きく口を半開きにして大きく目を見開いたセドリグの近くを、鋭い風圧とともに、小石がばちっとかすめていった。


 セドリグのタイトになでつけられたオールバックの髪が風圧でばあっと揺れた。


 スーツも大きく揺れたものだから、パフドで挿されていたポケットチーフが胸ポケットから飛び出して、宙を舞った。


「……ひっ……」


 か細い呼吸のような声だった。


 セドリグは、そんな声を上げただけだった。


 すべては、一瞬の出来事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42bpk4s771sz1iupmgjda531438n_aix_5k_8c_2
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ