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その石の軌道たるやふっと勢いよく放たれた矢のごとし、である。
少し調子に乗って言えば、小石の矢すなわち小石アローである。
小石アロー、少し売れないふうの微妙な芸人っぽい表現であるが、威力は確かだと見込まれた。
俺とセドリグの言葉がかぶってから俺が小石を蹴り込むまで、おそらく三秒にも満たなかっただろう。
本当に、刹那、一瞬である。
『ここでえっ! 九重君が前に出たぁっ!』
『ディフェンスはあっ……ああああっ! 間に合わなあああいっ……!』
『ノーガードだあああ……っ!』
『そのままあっ……九重君のおお……ロングシューウウウゥゥゥゥ……トオオオオオオオオ……っ!』
俺のいた世界で大人気だった少年サッカーの漫画の実況の声が脳内で大音量で響き渡りそうなほどだった。
「ああ……っ!」
イフも、あっけにとられたように声を上げていた。
小学生くらいの時に校庭や土手で石蹴りに興じた諸兄姉も、少なくないだろう。
誰が一番遠くまで小石を蹴り飛ばせるか、競ったりしたのないだろうか。
かく言う俺も、何とかシュートとか必殺技めいた名前をつけて、小石をばんばん蹴っていたものである。
技名を叫びつつ石蹴りするなど黒歴史と言いきるのはたやすいが、あれはあれで、俺自身、けっこう楽しんでいたような気がする。
ネットで漁った程度の知識だが、石蹴りは、もともとは地面に図形を描きその図形の中へ石を蹴り入れる遊びである。
代表的な遊びかたは、以下のようである。
地面に丸や四角の区画を複数描いておきその一つの枠内に石を投げ入れその他の枠内を片足跳びで順々に跳んでいくのだ。
一巡したら石を投げ入れた枠の手前で片足の姿勢で石を拾って振り出しに戻るというものらしい。





