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無数のデエカの落ち葉が、"風駆"の風に巻き込まれて、ざああっと巻きあがっていた。
発動させた"風駆"は直接的な攻撃技ではない、あくまで移動技である。
風の力によって、通常の何倍もの速さで駆けるのである。
戦闘ではその戦場において縦横無尽に駆け巡る、とまで言うと話を盛りすぎだが、とにかく攻めの起点や守りの離脱に使えるのだ。
攻めによし守りによし、一粒で二度おいしい、そんな技である。
このネムリアの森の戦闘では、応用をきかせて、足下に風を起こすことで跳躍に使用したりもした。
足下にトランポリンをとてつもなく強化したような反動を起こし、エレベーターで急上昇するようなふわふわした無重力感のなか、足下に巻き起こった風を踏み台にして、高々と跳躍したのだ。
跳躍というか、少し調子に乗って言えば、滞空時間が長いプチ飛翔である。
言わば水平の高速移動である。
横から縦へという、思いつきにも似た発想の転換だった。
俺は、小さな風をぐっと踏んだ。
(いける……かっ)
俺は、心中叫んだ。
ここでさらなる応用に、俺は、賭けたのだ。
俺は、自身の右足下に風がまとわりつくビジョンを強くイメージした。
右脚が、とたんに不自然なくらいふっと軽くなった。
俺は、そのまま地面に転がってい小石をかっと蹴り込んだ。
そう、文字通りの石蹴りである。
しかし、単なる石蹴りではない。
つまりは、"風駆"による風の力で威力が増強された石蹴りである。





