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「……ふん」
俺との会話が面倒になったように、セドリグは、イフに向きなおって、
「僕は、イフにわかってもらいたいんだよ。冒険者なんてわりに合わないことはやめるべきだ」
と、言った。
「僕と一緒に、ノーハン商会をそしてリリーカルナ商会を盛り立てていこう」
「……それは、お断りします」
セドリグは、困ったように笑って、
「はあ……強情だな。これは、満身創痍の君らに対する僕なりの最大限の譲歩だと……」
(……ここだ!)
俺は、心中叫んでいた。
時きたれりである。
(この瞬間を……待っていた!)
ブラフを張るのならば、今このタイミングしかない。
俺のいた世界の太鼓を叩くリズムゲームで言えば、まさにバチでどんっと叩くタイミングだった。
俺のいた世界のファミリーレストランすなわちファミレスで言えば、ウェイトレスのお姉さんがテーブルに近付いてきたのでメニューを注文するために呼びかけるタイミングだった。
今この瞬間のタイミングだったのだ。
ざっと俺がデエカの落ち葉を踏みしめる音がした。
「お互いさまだな」
俺は、すっと自信たっぷりに言った。
いや正確に言えば、自信たっぷりを装って言ってのけたのだ。





