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「水と油、犬猿の仲……そんな関係だった両者が近しくなる。そういうことか?」
俺の問いかけに、セドリグは、苦笑しながら、
「語弊のある言いかただな」
と、言って、
「……詳しいじゃないか。どこからか情報でも仕入れてきたのかな?」
と、続けた。
「……」
俺は、黙ってはぐらかした。
セドリグの問いかけに対して、心中イエスと言わざるをえなかったのだ。
俺が今セドリグに言ったことのほとんどは、ヴィセントの街の武器屋の親父の話の受け売りである。
「さあな」
俺は、そんなふうに言うのみにとどめた。
「……まあいい。いずれにしても、ココノエ君の勝手な想像だろう」
セドリグは、肩をすくめた。
「想像……?」
セドリグは、ああと頷いて、
「商売上のライバル同士であることは間違いないだろうが、君が想像しているようなものではないと思うな」
と、言った。
セドリグは、用意してきた答えのようにすらすらとした調子で話した。
「そう、言ってみれば、切磋琢磨しあう関係かな。我らがノーハン商会は、そういう認識だよ。完全に君の誤解だ」





