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「僕に、これ以上彼を傷つけさせないでくれ」
優しさを装ったとってつけたような言い回しだった。
柔らかい言葉づかいに隠れている悪意、無味無臭の毒薬のようなものだ。
(……こいつ)
俺は、心中顔をしかめた。
交渉でも何でもない、ただの脅しである。
「政略結婚めいたことをしようとしているやつが、よく言う」
と、俺は、呆れたように言った。
「何か勘違いしているようだね」
セドリグは、せせら笑った。
「僕は、イフのことが嫌いじゃない」
「でも、好きでもないんだろう」
俺は塩対応に徹しながら感情を抑えながら言った。
「ほう?」
「好きな相手に、こんなバカげたことをするはずがないものな」
感情を抑えながら言ったつもりだが、いらだちを完全に隠すのは難しかった。
「大人の事情というやつだよ、ココノエ君。子供の君には、まだわからないかもしれないけどね」
と、セドリグは、頭を軽く振って言った。
俺は、セドリグを見て、
「ださい言いかただな」





