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ネムリアの森は、夕闇に包まれかけていた。
クエストでこの森に入ってから、はや数時間が経過しているのだ。
見上げた空の七割がたは、薄暗い紫色に塗りかえられていた。
厚ぼったい雲も出てきていて、視界は、だいぶ悪くなってきている。
「あきらめろ」
俺は、言いはなった。
「……」
セドリグは、俺の言葉に答えることもなくただ微笑していた。
俺は、続けて、
「あんたの誤算は、致命的だ」
「誤算……? 何のことかな?」
と、セドリグは、うそぶくように言った。
「それがわからないあんたじゃないだろう?」
セドリグの頭の回転のよさは、認めざるをえないところなのである。
そのセドリグが、俺でも思いついたようなセドリグにとっての誤算に気づかないはずがない。
「……」
セドリグの目つきが、鋭いものに変わった。
「あんたは、切れ者だからな」
「……く、くく」
セドリグは、少しうつむいて忍び笑いをした。





