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(それに、すでに身バレしているということ……)
二つめに、セドリグ自身の正体が露見しまったことだ。
これは、セドリグにとっては、計画の根本が揺らいでしまう事態だ。
セドリグの計画とは、あれである。
まずは、不良にお目当ての女の子につっかかるように影でこっそり依頼しておく。
そこからの、女の子がその不良につっかかられて困っているところに颯爽と現れて不良を撃退する。
この不良の撃退劇は、もちろんインチキ八百長である。
そして、女の子の好感度を上げようという作戦である。
ありがちだとかわかりみだとか思う諸兄姉も少なくないだろう。
実際漫画やアニメでおなじみでありがちなのだ。
八百長を駆使した好感度アゲアゲ作戦である。
このアゲアゲ作戦は、不良に依頼した事実が女の子には隠されていることすなわちふせられていることで、はじめて効果を発揮する。
不良に頼んで自作自演が女の子に発覚した場合、待ち構えているのは、好感度だだ下がりだ。
いやそれにとどまらず、ドン引きさえありえるだろう。
この作戦は、ハイリスク・ハイリターンでもあるのだ。
今回の場合、女の子すなわちイフには、事情がすでに露見してしまっているのである。
これでは、作戦も何もないだろう。
(……そして、何よりも……)
三つめに、冒険者を志すイフの意思が本物で、簡単に折れるようなものではなかったということだ。
セドリグは、イフの覚悟を甘く見ていたのだ。





