4-436
(……)
話が読めてきたし、点と線とがつながりはじめたような感覚である。
俺は、昨晩の冒険者ギルドの酒場での俺とセドリグのやり取りを思い出していた。
「イフがギルドでパーティーを組んだと聞いたものだからね。イフの将来の伴侶である僕としては、どんな人物なのか気になっていたのさ」
伴侶とは、言わずもがな、結婚相手である。
イフはと言えば、こちらも言わずもがな、丁重にお断りモードである。
セドリグは、イフと、言うところの政略結婚を企てている。
政略結婚とは、結婚当事者の家長や親権者が自己や家の利益のために結婚することになる当人たちの意向を無視してさせる結婚である。
結婚する当人たちの気持ちを無視して、政治的な駆け引きや政治的な利用を主たる目的として、家長や親権者が決めてしまう結婚なのだ。
当人たちは蚊帳の外である。
(もっとも、今回で言えば、当人であるセドリグ自身が、大きく一枚かんでいるケースではあるんだろうが……)
と、俺は、考えた。
ヴィセントの街のリリーカルナ商会とトライデントの街のノーハン商会の者同士の結婚ともなれば、両商会はもはや身内同然だ。
巨大な商会の誕生となるだろう。
俺のいた世界で言えば、コンビニ業界やデパート業界の大手同士が合併して、その規模が急拡大するようなものだ。
唐揚げが売りのコンビニとその場で豆がひけるコーヒーが売りのコンビニ同士が合併したらどうだろう。
うまい唐揚げとうまいコーヒーを同じ店舗で味わえるというマリアージュ、すさまじい破壊力である。
言いすぎ感はぬぐえないものの、ある意味無敵とも言えるのではないだろうか。
セドリグは、ノーハン商会の発展に大きく寄与するのだから、その見返りも相当なのかもしれない。
丁重にお断りモードのイフ当人ではあるが、祖父であるリリーカルナ商会の会長は前向きだということだ。





