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「本当は、イフが冒険者になるのを諦めてくれればよかったんだがね。そうであれば、僕だって、こんな面倒なことをせずに済んだんだよ」
セドリグは、肩をすくめた。
「服もだいぶ汚れてしまったな……調達のクエストだかなんだか知らないが、いつもこんなにスマートじゃないことをやっているのかな?」
うんざりしたような調子のセドリグに、俺は、
「……あんたのその服装のほうが、この場所に似合っていないだけだろう」
と、言った。
「言われなくても。そんなミスマッチの中でさえ圧倒的に映えるこの服のよさがわからないとは、気の毒なことだ」
「……そうか」
会話の場外乱闘もしくはドッジボールもどきである、話が噛み合わなかった。
しかしまあと、セドリグは、大きくため息をついてから、イフに向かって、
「つまらない冒険者になどなって、こんなどこの馬の骨かもわからないようなつまらない男とパーティーを組んで、こんなつまらないクエストをこなす……そんなことそんな日々にいったい何の意味がある?」
ひゅおっと風が薙いだ。
「……てください」
イフの一声だった。
「ん?」
セドリグがほほ笑みを顔にはりつかせたまま、言葉を止めた。
「……訂正してください」
そう言ったイフの瞳には、吹っ切れたような意思が宿っているように見えた。
「あなたが言ったことは、私たち冒険者……私たちのパーティーに対する侮辱です」
と、イフは、静かだがはっきりとした口調で言った。





