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恋愛ドラマや恋愛小説や恋愛ものの漫画のような台詞をじつに自然な調子で言ったセドリグである。
ただただそれが当たり前だと言わんばかりの台詞だ。
セドリグの言葉は自信たっぷりで、それが当然のような言いぶりだった。
それは、穏やかな口調だった。
語りかけるような諭すような調子である。
イフに向かって柔らかくほほ笑んでいるセドリグの目は、しかしながら、冷たかった。
目は笑っていない、冷厳な眼差しそのものである。
イフは、静かな声のまま、
「……それはお断りしたはずです」
と、淡々(たんたん)と言った。
明確なイフの拒絶の意思だった。
イフは、言葉をきって、セドリグの言葉を待った。
「その通りだ」
セドリグは、目を細めた。
「イフは、そう言っていたね」
セドリグは、イフの言に逆らわずに頷いた。
イフのそういう返答を予期していたかのようにまったく動じることもない様子だった。
そもそも、意にも介していないようだった。
「もちろん、イフの気持ちは大切だ。こういうことは、当人たちの気持ちが大切だからね」
セドリグは、イフに、そう言った。





