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「わ、わかりました。ですが」
やっと落ち着きを取り戻した様子のイフは、目を細めて、
「いきなり、こんな公衆の面前で、膝を遠慮なく触ってくるなんて、あなたは、大胆すぎますね。いやらしいです」
(なん……だと?)
と、俺は、イフに言われて、とまどった。
状況を整理してみよう。
「……」
俺は、イフの前に屈みこんだまま、押し黙って考えた。
確かに、言われてみれば、イフの白いワンピースのスカートのような裾に当たる部分が、ふわふわと俺の顔に触れていた。
確かに、気付いてみれば、誤解のないように言っておくが、ふんわりと柔らかい香りも、俺の鼻孔をくすぶっていた。
落ち着いて、第三者的視点で、考えてみよう。
目の前の出来事を正直にまっすぐに受け止めると、つい感情的になってしまうのが人間である。
逆に言えば、第三者の視点で物事を見ることができれば、感情的にならずに済む。
何があっても冷静な人は、第三者的視点で俯瞰しているからこそ感情的にならないのだ。
俺は、心中そのような大層な御託を並べながら、つとめて、冷静に考えようとした。
「……ふむ」
男子学生が、小柄な女の子の足と足の間に顔を近づけているようにも見えなくもないのではないだろうか。
見上げてみると、イフのじと目が、俺を捉えていた。
(あ、あれ……?)
イフのワンピースが、風に揺れていた。





