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「きもだめし……みたいなものかな」
セドリグは、そんな言いかたをした。
とりあえずそれでと言わんばかりの適当なニュアンスが込められた言いかただった。
俺のいた世界のテレビドラマのワンシーンで居酒屋やサラリーマンがとりあえずビールそれと枝豆それに煮込みねと言うぐらいのとりあえず感だ。
しかし、相手のペースに惑わされるわけにはいかない。
「……みたいな、だって……?」
セドリグの軽すぎる口調に、俺は、文句の一言でも言いたくなるのをこらえながら、言った。
「イフに少し怖がってもらう必要があったんだ。ああ、ココノエ君。君は、おまけだよ」
セドリグは、イフと俺を順に見ながら言った。
「……」
イフは、黙っていた。
「……イフの冒険者としての活動を邪魔するためか?」
と、俺は、聞いた。
「そんなところだ」
セドリグは、くくっと低く笑って、
「少し怖い思いをすれば、冒険者になろうだなんて馬鹿な考えは捨てるだろう?」
と、続けた。
「……」
ちらりとセドリグから視線を送られたイフは、くっと地面をわずかに踏みしめた。
「イフは、僕と一緒にいたほうが幸せだよ」





