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ふと、俺は、イフの膝の傷が、目についた。
血は、まだ少しにじんでいる状態だ。
(確か、一つか二つ、持っていたかな)
学生服の内ポケットから、はたして持っていた絆創膏を取り出して、イフの前に屈みこんだ。
「ひゃうっ!」
驚いたように、イフは、声を上げた。
「ああ、ごめん。驚かせちゃったか」
と、俺は、苦笑しながら、イフの膝に絆創膏をぺたりと貼った。
「なな、何ですか、これは……?」
イフは、動揺の声のまま、聞いた。
「絆創膏だけど?」
「バ、バンソーコー……?」
イフの発音が不安定になったし、唐突に顔を真っ赤にしながらどもっているのが、少し気になった。
(なるほど。この異世界には、絆創膏はないのか)
と、俺は、心中合点がいった。
俺は、笑って、
「これは、傷口を塞ぐ小さな包帯みたいなものだ。変なものじゃない」
「そう、なのですか?」
「切り傷やすり傷などをしたときに傷口に雑菌が入るのを防いでくれるから、治りも早くなるよ」
と、俺は、言った。





