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「じつに馬鹿らしい」
と、セドリグは、言葉とは裏腹に楽しそうに言って、
「どうにも馬鹿らしくて薄っぺらい応酬だとは思わないか?」
と、続けた。
「……あんたのそういうもってまわった言いかたのことか?」
と、俺は、聞き返した。
「くくっ。言うじゃないか」
セドリグは、顔を少しうつむかせて、笑った。
「ココノエ君が、僕とのやり取りに窮屈さを感じているのはわかる」
「……そうだな。話しやすくはない」
そう言いつつ、俺は、イフからそっと手を離した。
「すまない。僕の頭の回転が速すぎるから、君が話についていけないようだからね」
悪びれるわけでもなく、いけしゃあしゃあと謝罪の言葉を用いたセドリグである。
「我ながら、機知に富みすぎるのも困ったものだ」
「……すごい自信だな」
「自信とかそういう話じゃなくて、事実だよ」
セドリグは、苦笑した。
「なに。悲嘆する必要などないよ」
憐れむように言ったセドリグは、続けて、
「こんな中身のない会話ならば、我らがノーハン商会で商談を数多くこなしてきた僕に、分があるのは当然だ」





