4-410
セドリグが、不愉快そうに目を細めた。
ここにいたって、セドリグの感情をわずかにかいま見たような気がした。
セドリグは、俺を格下とみている。
格下の相手とみている俺からの反駁に、反応したともみて取れた。
「……俺は、あんたと話をしているんだ。演劇をやっているわけじゃない」
俺は、淡々(たんたん)として言った。
「いや、演劇だよ」
セドリグは、さらりと言いきって、
「いや、さしずめ出来の悪い喜劇といったところかな。面白くもない」
と、続けた。
俺の横にいるイフはと言えば、少し落ちついた様子だった。
イフは、俺とセドリグのやり取りを見守るように黙っていた。
セドリグに対する注意を怠らないようにしながら、前を向いたままの俺は、剣でふさがっていない手で、イフの小さな手をそっと握った。
「……大丈夫か?」
わずかにきゅっと、イフが、握り返してきた。
「……」
俺の問いかけに、イフは、静かにこくんと頷いた。
白銀の髪のサイドテールが、ちょこんと揺れた。
「なるほど。言葉と言葉とで交わす会話と、台詞と台詞とが交わる演劇……似て非なるなるもの。たしかに本質は別物だ」
セドリグは、ひとり合点したように言った。





