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「……お、おう?」
俺の返しも、的を射ていない感じだ。
「抑揚とかフォールとかこぶしとかそういう話じゃないよねっ?」
湊は、むんっと綺麗な眉をつり上げつつ、
「カラオケの採点とかそういう話じゃないよねっ?」
と、湊は、矢継ぎばやに言った。
「……お、おう?」
こうなると、嵐が過ぎ去るのを待つしかなくなる。
消極的などと言うことなかれ、だ。
事なかれ主義と揶揄されても、実際にそうするしかない場合だってあるのだ。
(……ままよ)
俺は、心中肩をすくめた。
街の中で、嵐に見まわれる。
すさまじい雨あし、すぐにずぶ濡れだ。
嵐のどしゃ降りの中で折りたたみ傘をぶんぶんと振り回したところで、抵抗のての字にもならない。
ぽきっと傘のほねが折れてそこまで、ジ・エンドである。
折れなくてもひしゃげたりすること、そこそこの確率だ。
雨宿りをしつつ、待つしかないのだ。
これは、妹がいる賢明な諸兄姉ならおわかりいただけるだろう。
俺たちの動向を見守っていた女子三人組すなわち女子トリオはと言うと、おのおの戦慄していた。





