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まるで、嵐の前の静けさだ。
俺は、これを感覚的に知っている。
伊達に湊と兄妹をやっているわけではないのだ。
端的に言っておこである、湊はなかばおこだった。
問題なのは、そのおこの原因がまったくわからない見当がつかないということだ。
湊が大切にとっておいた冷蔵庫のプリンを俺が黙って勝手に食べてしまった時は、
「なんで食べちゃったのおおおおおおおおっ?」
だったし、嫌がっている湊を無理やり遊園地のおばけ屋敷のアトラクションに連れていってしまった時は、
「だからいやだって言ったでしょおおおおおおおっ!」
だった。
(……くっ)
俺は、唇を噛んだ。
今回はかってが違いすぎる。
(この前話題になった正解率二パーセント以下の推理小説風味アドベンチャーゲームよりも、謎が深すぎるっ……ような気がするっ……)
俺は、心中呻いた。
回転でもないはたまたハミングでもないというのなら、何だと言うのだろうか。
なかばおこ気味の湊の甘い吐息が、俺の鼻孔をくすぐった。
はたして、下馬評通り、嵐が巻き起こった。
「普通、そこじゃないよね、それじゃないよねっ?」
問いつめるような勢いである。





