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俺は、湊の勢いにおされながら、
「……ああ、そっちな!」
俺は、大きく頷いた。
ここにいたって、俺は、やっと得心がいった。
頭の上で電球にぴっかんとあかりが付いたように、納得がいったのだ。
(まったく……)
俺は、くっと肩をすくめた。
そういうことなら口に出して言ってほしいものだ。
しかし、俺にも落ち度はある。
情けないかな、俺は決して勘がいいほうではないのだ。
「すまない。俺が、鈍かった」
と、俺は、素直に謝った。
「回転のことじゃないよな。俺の目が寝ぼけていた」
「……!」
湊の声にならない声だった。
湊の頭の上に、エクスクラメーションマークがとんっと浮かんだような感じだった。
一条の光を見いだしたような期待に満ちた表情である。
俺は、すっと片手を上げながら、
「何の曲かは知らないが、ハミングは二回目のほうがよかった」
と、言った。





