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「……ぎりぎり及第点」
「……彼女も、あれじゃあ大変だね」
「何とかおさまりそう……」
まわりのこそこそ声も、なぜかほっとしたムードである。
(……無事正解の選択肢をひけたようだな)
俺も、内心ほっとしていた。
若干危うくもあったが、結果オーライである。
俺は、すっと片手を上げながら、
「一回目の回転のほうがよかったと思う」
と、言った。
「……」
湊の頭上のビックリマークが、急速にしぼんでいった。
ずーんという効果音まで聞こえてきそうだ。
湊の目がものすごく無気力になっていくのを不思議に思いながらも、俺は、頷きながら、
「うん。一回目の回転のほうが、軸がぶれていなかった。ペースもゆったりめで落ちついていたし、うん、うまく回れていたと思うぞ」
と、丁寧に言った。
「……」「……」
俺と湊は、無言になった。
びゅおおっと軽い風が吹いて、試着室の簡易カーテンがじゃああっと軽く揺れた。
どうしたことなのだろうか、一瞬、風が流れたような気がした。





