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湊は彼女ではなく普通に妹なのだが、今はそこにツッコんでいる場合ではなさそうだった。
この寒々しい空気、痛々しい雰囲気は、あれである。
何となくわかる、感覚でわかるのだ。
恋愛シュミレーションゲームで言えば、確実に間違った選択肢をひいたパターンである。
(……なんて……ことだっ……!)
ぐっと目をつむって唇をかんだ俺である。
俺は、打ちひしがれるように心中叫んでいた。
だが、肝心な、何が間違っているのかが、俺には皆目見当がつかなかった。
「……ええとね、お兄ちゃん……」
俺の反応に落胆したような湊だった。
なぜ湊がそんな表情になるのか、俺には、今一つわからなかった。
「……にぶ……にぶ……鈍すぎるよ……」
小声で何かつぶやいている湊だった。
「……湊?」
湊は、必死に気をとりなおしたように、ぐっとガッツポーズをとった。
「……いや、まだだっ! まだ終わらんよっ!」
とか言いながら、もう一度試着台の上で静かにゆっくりと一回転した。
「~~~~っ♪」
湊は、何かのCMで流れている女性歌手のポップス調の曲でハミングした。
まるで、さきほどの動作の焼き直し、テイク2(ツー)の様相だ。





