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にっこりして、俺の次の言葉を待っているような湊である。
その視線たるや、俺に何かを期待している感たっぷりの輝きだった。
(……え?)
湊が一回転して黄色のロングスカートがふわっとなって湊を前から横から後ろから見ただけである、それだけなのだ。
そんなきらきらした目で見られても、何のことなのか見当もつかないから、反応のしようもなかった。
俺は、さらに心中小首をかしげながら、
「……何で回転しているんだ?」
と、聞いた。
「……」「……」
俺と湊は、無言になった。
ぴゅおっと軽い風が吹いて、試着室の簡易カーテンがしゃああっと軽く揺れた。
どうしたことなのだろうか、一瞬、虚脱の風が流れたような気がした。
試着室の台の上で一回転した湊と試着室の前でぽつんと一人たたずんでいる俺に降りかかっていたのは、生ぬるい視線とか微妙な視線とか、
「……ちょっと、あの人」
「……あれじゃ、彼女、かわいそ……」
「ひいちゃうかも……」
そんなこそこそ声とかである。
頬のあたりに冷や汗を感じた。
(なん……だと……)
と、俺は、絶句していた。





