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俺が迎えうつ姿勢をとると、イフは、俺の顔を見て、控えめに頷いた。
手を出すなということだろうか。
「そんな危なかっしい真似させられるわけないだろう……!」
イフの白銀の髪の小さなサイドテールが、ふわりと触れた。
イフは、小さなガラス瓶を、取り出していた。
女の子らしい可愛らしいデザインの瓶には、淡い赤色の液体が、入っていた。
「えいっ」
コルク栓を取ると、イフは、その小柄な体全体を使って、まるでタクトを振るうように、ガラス瓶を振った。
ガラス瓶からこぼれだした淡い赤色の液体が、宙に踊ったかと思うと、きらきらと輝いた。
まるで、単色の小さな虹である。
(綺麗……だ)
と、俺は、思った。
不謹慎にも、俺は、思わず見とれていた。
「爆ぜよっ、"小さな赤"!」
イフのかけ声とともに、スローモーションのように輝きが放物線を描いたように見えたかと思ったら、次の瞬間には、その軌道線上に、炎の塊がつくられていた。
炎の魔法を現実に目の当りにしたら、こんな感じなのだろうか。
もう少ししょっぱく表現すれば、化学反応で、大気中で小さな爆発が起こったような感じだ。
いずれにしても、イフのつくり出した炎は、俺にとって、非現実な事象の顕現そのものだった。
小さな爆風が起こって、チンピラCの身体が、大きく吹き飛んでいた。
勝負あったようである。





