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「セドリグ・ノーハン……」
と、俺は、相手の名前を言った。
セドリグは、ふむと軽く息をついた。
人をくったような態度は、昨晩の酒場でのそれと変わりがなかった。
「ココノエ君に馴れ馴れしく呼ばれるほど、僕の名は軽くないんだがね」
セドリグは、肩をすくめながら、そう言った。
「……フルネームで呼んでいるんだ。馴れ馴れしいんじゃない、よそよそしいんだよ」
俺は、そう返した。
「なるほど。そういう捉えかたもできるか」
セドリグは、俺のことなどまるで興味がなさそうに空を仰いでから、俺に向きなおって、
「うん、そうだな。ココノエ君が僕に対してあまりいい感情を持っていないのは、承知しているよ」
と、言った。
「そいつはどうも」
と、俺は、返した。
「それはそうと……」
そう言いながらセドリグは、いまだ呆然としているイフに向かって、
「イフ。なかなかの戦いぶりだったよ。すごいじゃないか」
と、話しかけた。
「……」
セドリグの言葉に対してイフは黙ったままだった、いや、うまく反応できないようだった。





