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「"小さな青"を、使います!」
と、イフが、魔法瓶を握りしめながら言った。
魔法瓶の中の液体は、透き通るようなオーシャンブルーである。
「この疑似魔法が、一番射撃の正確性に秀でています」
イフが、魔法瓶のコルク栓を取った。
それから、その小柄な体全体を使ってまるでタクトを振るうように魔法瓶を振った。
ガラスの瓶からこぼれだしオーシャンブルーの液体が、宙に踊ったかと思うと、きらきらと輝いた。
「きらめけ……っ!」
イフのかけ声とともに、スローモーションのように輝きが放物線を描いた。
「……"小さな青"!」
イフが、疑似魔法の名を叫んだ。
次の瞬間には、その輝きの軌道線上に、水の塊がつくられていた。
「吹き飛べっ!」
振動音を鳴り響き、大気中で小さな泡が起こった。
イフの疑似攻撃魔法"小さな青"である。
泡が、猛スピードで射出された。
ごく小さな津波すなわちプチ津波といった水の音が、ほとばしった。
その勢いたるやまるで水の刃だ。
水の刃と化した"小さな青"の攻撃は、俺のいた世界の野球選手の送球を思わせるような、まっすぐで正確な直線の軌跡を描いて、ぐんぐんと進んでいった。
はたして、小さな赤い光が発生していた百メートルすなわち百ルトーメほど先の木に、水の刃が直撃した。





