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これは、壁ドンではない。
お互いのおでこに軽く触れたのだから、おでこにトン、言うなれば、おでトンである。
もちろん、おでトンは、俺の造語である。
今思いついたし今作った造語である。
もちろん絶対に流行らない。
「……」「……」
イフは、くりくりとした大きな瞳でまばたきもせずに俺を見ていたものだから、俺も、そういうふうに見返していた。
砂糖一つまみ程度のほんのわずかな沈黙のあとに、
「……」
ふわとかいう小さなため息がイフの口からもれたように思えたのは気のせいだろうか。
あるいは一瞬だけイフの顔が紅潮したように見えたのは気のせいだろうか。
なぜだか眉は困ったようにでも困っていないように八の字のイフだ。
俺は、心中首をかしげながら、
(擬似魔法を頼んだわけだが……)
予想外の謎のイフのリアクションが、少し腑に落ちなかった俺ではあった。
しかし、今は、そんなことを考えている場合ではない。
「……」
イフは、小さく息を吐きながらこくんと頷いた。
こうっと音がたったかと思うと、デエカの落ち葉が、局地的に巻きあがった。
かさかさという音ががさがさという音に、がさがさという音はばっばっという音に、変容していった。





