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剣の切っ先がきらっと光りを帯びるポーズもとい構図は、とにかく格好よさマックスなのである。
小さい頃に自宅の和室で、画用紙を丸めて作った剣もどきでそのポーズを真似てどや顔で佇んでいたところを妹に見つかって、あああともだえたことは黒歴史であるし、ここでは割愛でいいだろう。
ただ今、俺の高位魔法で創り出されている不可視の風の巨剣は、そんなポーズがとれそうなぐらいの迫力はあると言っても、大げさではない。
「……等しき殲滅を与えよ……!」
と、やけに落ち着いた魔法の詠唱の文句が紡がれていた。
詠唱が終わり、高位魔法が発動した。
(これで……薙ぎはらってやる!)
風が、うなる。
一気呵成、これで勝負を決めるつもりだった。
そして瞬間、ごおんっと荒ぶる低音が大気を震わせた。
魔法の詠唱者である俺を中心に、激しい風の渦が巻き起こったのだ。
「……高位魔法……!」
と、俺は、高々と宣言した。
ぐおんっと大気が、猛々(たけだけ)しく揺れた。
「"暴風塵斬"……っ!」
俺は、当たり前のようにその魔法の名前を紡いでいた。
また台詞にエコーがかかっているかのように、それらしく唱えられた魔法だ。
魔法名もまた、当たり前のように相変わらず、王道かつ鉄板の右手がうずく系のネーミングセンスである。
「暴れ狂う……暴風……っ!」
と、イフが、愕然とした様子で言った。





