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「なめやがってぇっ!」
チンピラAが、なかばやけになったように、俺に向かって走り込んできた。
俺は、拳を強く握って、前方を見据えて、深く息を吸い込んだ。
漠然とだが、俺は、感覚をつかみはじめていた。
静かにゆっくりと息をはきだしながら、目には視えない何かを手繰り寄せるようにイメージした。
俺が持っていたRPGの据置機版と携帯機版の両方が出ているゲームソフトで、釣りのミニゲームが入っている、作品がある。
作品はシリーズものなのだが、毎回必ず、釣りゲームが組み込まれている辺り、開発者の釣りに対する情熱を感じることができるような気がするといっても、過言ではないだろう。
このゲームでの必須テクニックは、アタリとアワセの感覚をよく掴むことにつきる。
まず、竿を投げ込んで、待つ。
そして、魚がエサに食いついたら、ウキやラインや穂先に大きかったり微弱だったり何らかの変化が出るのだが、これがアタリと呼ばるもので、そのタイミングで魚の口にハリを掛けにいくのだが、それがアワセと呼ばれるものだ。
ボタンを押すタイミングを見極めるのが、とにかく難しいミニゲームだった。
時間にすると、秒単位の話だが、俺の脳内のイメージ工程は、このアタリとアワセに近いように思えた。
(……ここだ!)
俺は、感じ取ったタイミングで、目を見開いた。
視界がはじけて、暗転した緑のモノクロームの視界の中、閃光のコマンドを、俺は、読み取っていた。
6+小K。
6とは、レバー入力で言えば、六時の方向すなわち真っすぐに右で、小Kとは、小キックの略称だ。
導き出されたコマンドを、俺は、なぞった。
俺は、身体を前方にひねって、チンピラAの拳を回避すると、腰を回すようにして足を横から回して蹴りを放った。
俺の回し蹴りが炸裂して、悲鳴とともに、チンピラAの身体が、派手にごろごろと転がっていった。





