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すべての視界が、ナイトビジョンによる無色彩の映像のように変容した。
一瞬で、見えているものすべてが緑の単色に染めあげられた。
この緑のモノクロームの視界は、格闘ゲーム、いわゆる格ゲーでの超必殺技を使った際の演出である画面の暗転に似ている。
(……こい!)
俺は、引き寄せるべき技のコマンドを強くイメージした。
はたして、閃光が奔って、文字列が
閃いた。
236236+大K。
通常の技よりも上のランクと言ってさし支えない、いわゆる大技のコマンドである。
236236+大Kというコマンドは、この戦闘で多用している6+小Kや236+大Kというコマンドよりも、複雑なものである。
236+大Kと比べても、レバーを余計に90度回転入力する必要がある。
入力の難易度も上がるし手間と時間もかかるし、入力失敗のリスクも上がる。
コンパネのアーケードステックをさばくように、俺は、浮かんだ文字列に導かれるように脳内でそのコマンドをなぞっていた。
「……っ」
ぐんっと一気に身体に負荷がかかっていくのが、わかった。
「ソラ……っ?」
心配そうに小さな体を寄せて聞いてきたイフに、俺は、
「……問題ない。大丈夫だ」
と、言った。
胸や手や足などにきゅうっと圧がかかった。
まるで、身体全体が血圧計に包みこまれて力がじわじわと加えられているような感じである。





