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「……そ、そんなことないですっ」
と、イフは、言っているそばから顔を紅潮させながら、言いのけた。
顔が赤いというのは、なぜか全力で否定したイフである。
「……ぜんっぜんぜんぜんぜん赤くなんかこれっぽっちも、です!」
と、イフは、必死な調子で言った。
ぜんっぜんぜんぜんぜんの部分は、謎のリズム感さえある必死な調子である。
「……おい。語頭とか語尾とか、思いきりあやしいぞ……」
と、俺は、この状況下にありながら、ツッコまざるをえなかった。
イフが、うつむきながらごにょごにょと、
「それに……胸、とか……」
かろうじてそれを聞きとった俺は、
「問題ない」
と、言いきった。
「支障があるほどじゃない、というかむしろぜんぜん当たっていない」
と、俺は、事実をそのまま述べた。
そうなのだ、一口に比喩的に言えば、イフのそれは、
「まな板だしな」
「……!」
唐突な謎の圧力すなわちプレッシャーを感じた。
空気がぞわっとざわついた気がしたのは、気のせいだろうか。





