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「しかたがないだろう。有事なんだ」
俺は、イフの華奢な身体を抱き支えながら、返した。
「……」「……」
俺たちの間で、一旦、会話が途切れた。
空中でしばし見つめ合う二人の図アゲインである。
冷たい空の風の中、イフのぽかぽかとする体温を感じた。
俺よりもそれなりに年下のイフだ、基礎体温自体が高いということもあるだろう。
湯たんぽは大げさだが、ホッカイロのようなぽかぽか感だ。
そんなことを考えながら、イフを見ていると、
「……」
すっと無言で顔をそらしたイフである。
俺は、少し気になって、別の方向からイフの顔を覗きこむと、
「……」
すすっと無言で別の方向へと顔をそらしたイフである。
「顔が……少し赤いか?」
俺は、気づいてそう聞いた。
こんな身一つで空へと上昇などという稀有な体験をしているのだ。
緊張で身体のバランスが不安定になってしまったのかもしれない。
もしくは、こんな怒濤の事態の連続オンパレードである、色々と考えすぎて急にかっかっときてしまったのかもしれない。
深く考えたり頭を使ったりした後の発熱すなわち俗に言われる知恵熱みたいなものだろうか。





