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だが、俺の思惑は、もう一つあった。
こうしてスライムたちの上をとることで戦局を有利にしようという思惑とは別のもう一つである。
(凶と出るか吉と出るか……)
そんな迷いにも似た思考も頭の中をよぎるが、いかんせん、賽は投げられたのだ。
凶だろうが吉だろうがやり通すのみである。
風をきって、上空まで跳躍した。
デエカの木々の高さを突っきって、自身の水平の視線で言えば、四方を空と雲に囲まれるまでの高さまで上昇した。
だいぶ日が落ちてきている。
夕闇の帳がもうそこまで迫ってきていたから、視界もだいぶ悪くなりつつある。
薄暗い茜色の空といったところだ。
何でもない時ならば綺麗だなと感じるであろう夜にさしかかるちょっと前の空の茜色は、今この時は不気味にさえ感じた。
("風駆"の限界高度までそろそろだな……)
と、俺は、思った。
さきほど跳んだ時の感覚から推しはかるに、そろそろ最高度にさしかかるはずだ。
見下ろすと、スライムの大群がうごめいていた。
俺は、風を感じながら、剣を握りなおした。
(もう一勝負だ)
俺は、自身に言い聞かせた。
このまま地上に降りたったら、スライムたちの餌食である。
そう、この空中にいる間に片をつけなければならないのだ。





