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この移動技"風駆"の垂直移動は、風の勢いを利用しているものだ。
俺とイフは、重力に逆らってどんどんと上昇していった。
ただ、さっきの俺が跳んだ時とは、少し感覚が違った。
イフを抱えているからだろう、体勢が安定しないのだ。
言うなれば、自転車を二人乗りしている時の頼りなさというところか。
時々ところどころぎくしゃくとした感覚に包まれていた。
「~~~……っ」
おそらくは無意識にだろう、顔を少し強ばらせたイフは、ぎゅうっと俺に抱きついていた。
俺のいた世界ではじめて遊園地のジェットコースターに乗った子が手すりにしっかりがっちりと掴まっているかのごとくだ。
あっという間に、デエカの木のてっぺんを越えるぐらいまで、俺たちは、飛んでいた。
「……た、高い……ですっ」
と、イフが、声を震わせて言った。
「しっかり掴まっていてくれ」
と、俺は、下を見下ろしながら、返した。
イフは、こくんっと深く頷いた。
スライムたちは、俺たちを攻撃せんとゴムまりのように跳ねまわっていたが、無駄である。
すでに俺たちは、スライムたちの攻撃が届くくらいの高度にはいないからだ。
完全にスライムたちの上を取った形だ。
地上戦では相手の裏を空中戦では相手の上をとは、数々のゲームでも共通して成り立つ鉄板の戦術の一つである。
どちらも相手の反撃を受けにくく、うまくいけば一方的な攻撃が可能だ。





