2-25
チンピラ二人は、俺を睨みつけた。
やはり、メンチを切られるのは怖くないというと、それは嘘だ。
しかし、そんな弱気な心にブレーキをかけて、俺は、向き直った。
(今は、やるしかないんだ)
と、俺は、思った。
身体全体が、熱かった。
妙な高揚感である。
運動音痴の俺が、どういうわけか、小学校の高学年の時に走り高跳びの選手に選ばれたことがある。
通常の体育の授業で、たまたま、他の生徒よりも高く跳べたことがきっかけだった、中の上くらいの身長が功を奏したのかもしれなかった。
結果からさかのぼってみれば、体育の授業で出した記録は本当にまぐれで、一度きりの幻の好成績だったし、実際、大会でも何の成績も残せずに終わった。
しかし、大会開催までの間、俺は一生懸命練習をしていて、とても達成感があったのを、覚えている。
まったく根拠もない自分は高く跳べるのだという自信と、それを頼みにしたささやかな練習に、俺は、満足していたのかもしれない。
今の俺は、そんな達成感と高揚感のはざまのような感情を、感じていた。
すなわち、
(やれる)
という根拠もない高揚感が、俺の背中を、後押ししてくれているようだった。
俺は、チンピラたちを見据えた。
「こないのなら、俺のほうからいかせてもらうぞ」
俺の宣言は、チンピラたちに向けたものであるし、俺自身を鼓舞するためのものだ。
俺は、一歩進み出た。





