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たしかに、俺も言われた。
ただし、俺のいた世界のテレビによく出てくる熱血系のコメンテーターのごとく「熱くなれよ!」と言われたのは、黙っておくことにした。
スポ根的な「熱くなれよ!」は、熱血系と相性がいいのは、納得しやすいのではないだろうか。
いっぽう、見るからに清楚な美少女、それが女神エストである。
その女神エストが、外見から想像どおりのお淑やかなかわいらしい声で、暑苦しいまでに「熱くなれよ!」と言っていた。
語弊を恐れずに言おう、まるで似合っていなかった。
食パンにジャムの代わりにお新香をのせるくらいに、似合っていなかった。
ダンディーな紳士が、ウサ耳の頭の防寒具をつけているくらいに、似合っていなかった。
破滅的もしくは壊滅的な似合わなさだったのである。
しかし、俺は、そんな葛藤を振りはらいながら、
(……似合っていなかったが……それはそれ!)
べつにイフの中の女神のイメージはそのイメージで、そのままでいいだろうと思ったからである。
わざわざそのイメージを壊しても、詮のない話だ。
重ねてだが、俺は、野暮なことはしない主義なのだ。
(……ふたつ貸しだぞ、女神様……)
と、俺は、心中じと目になっていた。
イフは、続けて、
「また聖典によると……」
と、語りはじめた。
俺は、ばっと手で制した。





