534/4636
4-321
イフの手足が、かくかくと震えていた。
ぴゅううううっと風が、むなしく鳴った。
「イフぅぅぅっ!」
間髪入れずの俺のツッコミがあった。
不意打ちをくらった感満載の悲痛な呼びかけである。
「だだ大丈夫っ? わわ私は……うんっ、れれ冷静ですっ」
かわいらしくガッツポーズをとりながら、目をぐるぐると回しているイフである。
「……」
ぜんぜん冷静でもないようである。
いや、むしろ軽いパニックになっているようだ。
テンパりもテンパりである。
麻雀で言えば、負けがこんでいてもはやとんでしまうしかない、何の牌をきっても絶望的、ぐらいのテンパりっぷりだ。
「お、落ちつけ!」
叫んだ俺は、がばっとイフの肩をつかんだ。
「落ちつくんだっ!」
イフの肩の体温を手の平に感じながら、軽くイフの身体を揺らした。
「ももももちつついていますよよよ……?」
かくかく震えながら、イフが言った
「餅つかなくていいんだっ! 磯部餅は俺も好きだが、とにかく餅をついてる場合じゃない! 落ちつくんだ!」
俺は、イフをしっかりと見つめた。





