531/4637
4-318
「……何か策があるのですか?」
不安を押し殺しながらそれでも希望にすがるような声で、イフが、聞いてきた。
「……ふっ」
少しうつむいた前髪が、俺の表情を隠した。
さながら起死回生の逆転劇をなしとげる主人公でもあるかのように、俺は、不敵にため息をもらしたのだ。
口元だけほほ笑んだ俺を見て、イフの声のトーンが少しだけ明るくなった。
「ソ、ソラぁぁぁっ!」
希望を見いだした呼びかけである。
かりそめのハッタリの大波に乗っている俺が言えることは、
「策は……」
うんうんと頷きながら、真摯な表情のイフは、
「策は……?」
俺とイフの間に、緊迫の沈黙が流れた。
俺は、一拍置いてから、
「……今考えている」
ぴゅううううっと風が、むなしく鳴った。
「ソラぁぁぁぁっ!」
間髪入れずのイフのツッコミがあった。
いきなりはしごを外された感満載の悲痛な呼びかけである。
数秒の間、二人とも無言だった。





