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「おおおおおっ!」
俺は、叫んでいた。
鋭く前方に押し出された、俺の掌と手首の間の硬い部分が、チンピラBの腹部に接触した。
「なっ……」
チンピラBのかすれた驚きの声が、途中でかき消された。
瞬間的に時が止まったような感覚の後、強烈な衝撃が生じたからだ。
俺の掌底打ちが、チンピラBに、突きささったのである。
掌底と略して呼称される場合もあるが、これは、正拳突きやパンチ攻撃などと比べて、打撃対象の内部に浸透する重いダメージを与えたりより深い部位にまで衝撃を伝えたりする技である。
大気の振動音とともに石畳が震えて、チンピラBの身体が宙を舞い、あっというまに数メートル後方まで吹き飛んでいた。
チンピラBは、地面に叩きつけられて、沈黙していた、どうやら気を失ったらしい。
その場のいあわせた大人数が、一斉にしんと静まり返った。
誰もが想像していなかった光景が、そこにあったのだろう。
技を放った一番の当事者である俺が、この状況が一番信じられない自信があるくらいだ。
チンピラAとチンピラCは、目の前で展開されている光景が信じられないという様子で、呆気にとられていた。
それでも、はっと我に返った、チンピラAは、掌底のフォロースルーの体勢の俺に向かって、
「一体何なんだ……てめぇの動きはっ!」
チンピラAに対する答えは、持ち合わせていない、俺自身、身体が勝手に反応しているような事態だから、わけがわからないのである。
「……すごい」
と、屈みこんだままの白銀の髪の女の子が、声を発していた。
容姿もそうなのだが、白さを連想させる、澄んだ幼さの残った可愛らしい声だった。





