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「……え?」
イフが、小さな声をあげた。
五十メートルほど前方で、この異世界の呼称を使えば五十ルトーメほど前方で、赤い光があった。
「なん……だ?」
俺は、思わずいぶかしげに前方を見やった。
嫌な予感がした。
腰のあたりから肩のほうへと、ざわざわとした感覚がかけあがっていった。
風邪の時の悪寒によく似ていた。
「……」
静かなざわつきを耳元で感じた。
こうっと音がたったかと思うと、デエカの落ち葉が、局地的に巻きあがった。
その様子はまさに、小さな竜巻すなわちトルネードだ。
その落ち葉の巻きあがりの根本で、小さなサークルすなわち円状の赤い光りが、震えるように発光した。
あやしくもまばゆい光りである。
「なんの……光っ?」
思わず声が出ていた。
あまり光光と連呼していると、光という文字が米に感じられてしまうくらいの光りっぷりだ。
ぐうんっと地鳴りのような低音がとどろいた。
「……なっ?」
ぐわんっと地面が瞬間揺れたような感覚をおぼえた。





