2-22
理屈ではなかった。
緑のモノクロームの視界は、格闘ゲーム、いわゆる格ゲーでの超必殺技を使った際の演出である画面の暗転に似ていて、それが、既視感の正体だった。
236+大K、これも、慣れ親しんだ格ゲーの必殺技のコマンドだ。
レバー入力とボタンを同時押しをすることで当該必殺技が発動するのだが、ある程度格ゲーに慣れ親しんでいる者であれば、コマンドを見れば、指先が自然に反応してそのコマンドをなぞることができる、電卓やキーボードのブラインドタッチと同じようなものである。
コンパネのアーケードステックをさばくように、俺は、浮かんだ文字列に導かれるように、脳内でそのコマンドをなぞっていた。
(こう……か!)
刹那、風が巻き起こって、俺の身体は、自身でも信じられないスピードで、躍動していた。
相手の目の前まで、俺は、瞬時に移動していた。
「なにぃ!」
目を見開いたチンピラBの驚愕の声が、上がった。
俺だって、驚いている。
一体どうなっているんだ。
女の子は、目を丸くしたまま、小さな口を半分開いていた。
「くそったれがぁっ!」
ナイフを構えたチンピラBの一振りを、俺は、またもや回避していた。
そして、再び、視界が緑色に暗転し、閃光のコマンドが、浮かびあがった。
6+少P。
これは、特殊技、レバー入れ攻撃のコマンドで、下ガードでは防げない中段技に該当することが多い。
俺は、確信した。
閃光のコマンドを頭の中でなぞることで、俺は、技を発動させているのだ。





