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デエカの木々が俺の起こした風によってなぎ倒されているのだけが、今の戦闘の爪痕のように残っていた。
自然の環境音の静寂の中、イフは落ち葉の絨毯に立ちすくんでいた。
「……高位魔法……」
イフの髪が、風に揺れていた。
近くにあった、デエカの大木は、バターのようにすっぱりと切り裂かれて断面を見せていた。
ゲームの世界でのCGは昨今ではものすごくリアリティがあるが、それがそのまま目の前に持ってこられたような不思議な感覚である。
俺の放った"暴風塵斬の余波だろう。
イフは、なかば放心した状態で、
「何て……威力……」
と、小さく呟くように言った。
(……やはり、とんでもない威力だな、こいつは……)
俺も、内心ではすっかり放心していた。
ただ、驚きによる放心ではなく疲労による放心である。
(……っ)
俺は、立ちくらみがしてくらっと体勢を崩しかけた。
もともと疲弊している身体に、大技"暴風塵斬"はさすがにこたえたようだ。
「ソラ……?」
イフが、心配そうに俺の顔を覗きこんだ。
「……問題ない。気にするな」
言って、俺は眼前を見すえた。





